百合子の秘め事-幸せな時間、意外な訪問者

エッチの後、それぞれお風呂に入って……家のお風呂では狭いから、ホテルのように一緒ではなく別々になりましたが……しばらくまったりとした時間を過ごしました。
お茶を飲みながら本の話をして、自分の感想や寺田さんの解釈を聞いたりして、とっても楽しい時間。
さっきまであんないやらしいことをしていたなんて嘘みたい。
本当は時々ぶり返すように思い出しそうになったりはしたのですが、そうなっても自分で自分の感覚に知らない振りをしてやり過ごしました。
だって、寺田さんとの時間はエッチなこと以外にも使いたかったんです。
何気ない話や触れ合いでも、私にとってはとても大切でした。
理知的で優しい、気遣いをいつも忘れない寺田さん。
こんな人といつまでも過ごしていられたら、どんなに幸せなんだろう……。
彼が私に振り向いてくれるかなんて今は分からないけれど、だからこそこうしていられる時間を大切にしたかったのです。

そんな暖かく感じる時間も、あっという間。
夜も更け始めて寺田さんが予定していた帰りの時間になりました。
「もう遅いから、百合子ちゃんに送って貰うのはちょっとね」
私は少しでも長く一緒にいたかったけど、駅へのお見送りは断られちゃいました。
この辺りは比較的治安がいいとはいえ、自分を送った後に女の子を独り歩きさせる訳にはいかないと。
「部屋までの道順は覚えたしね」
あんまり複雑な道程でもないので、それはそうでしょうけど……
私がなんとなく残念そうにしているのが伝わったのか、寺田さんはふんわり微笑みました。
「今度来た時、また迎えに来てもらおうかな」
「……!はい!」
今度、また次があるんだ。
寺田さんがそのつもりがあるだけでも、嬉しくなってしまいました。
帰っていく寺田さんの背中をドアから見送りながら、私は次の機会があったら何を出そうか考えていました。
でも、結局もう一つのご馳走として私を……
「何考えてるんだろ」
自分のお花畑な思考に溜息をついて、ドアを閉めるのでした。

翌日、普通に大学で講義を終えて、一度帰って家で勉強をしたり軽く夕ご飯を食べたりしてからラウンジに行くつもりでキャンパスを出ようとした時でした。
「百合子……」
聞き覚えのある声に呼ばれ、足が竦みました。
どうして?
振り返りたくないと思いながら、ゆっくり後ろに振り向きます。
そこにはやっぱり、拓也が立っていました。
私と付き合っていた頃より少しやつれたような……なんだか目が据わっている感じがして怖いです。
こんな人だったっけ?と困惑しながら見ていると、拓也は口を開きました。
「お前、綺麗になったなぁ……新しい男ができたからか?」
「どうして……」
新しい男、というのはきっと寺田さんのことでしょう。
サークルにも顔を出していない、そこ以外で私と交友関係が被っていない彼が知っている筈もないのに。
「昨日、見たんだ。駅前で……思わず追いかけてしまって、お前んちに入っていくのを見た……」
この人、何を言っているの?
私が寺田さんを迎えに行って案内しているところを、後を付けていたってこと?
それを聞いて、私は気分が悪くなってしまいました。
気持ち悪い……別れた相手の行動をそんな風に……
「なあ、俺たちやり直せないのか?」
一気に詰めてきた拓也が、私の手首を掴みます。
痛い。
こんな乱暴なこと、する人だったっけ?
「な、何いってるの?」
混乱でそんなことしか返せませんでした。
嫌だ、一刻も早くこの人の側から離れたいのに。
私はどうしたらいいのか、すぐには思いつきませんでした。

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