百合子の秘め事-新しい季節と元カレの今

4月、大学3年生の前期が始まりました。
登下校時に見る満開の桜の花に和みながらも、勉強により身を入れなければなりません。
授業の内容もより専門的になって、頑張ってついていかなければと気が逸ってしまうこともあります。
同時に今年からは就活も視野に入ってくるので、大変なのは勉強ばかりでもないのです。
……正直、バイト先が好きな時に出勤できて時間の融通が利く今の仕事になったのは、よかったのかも知れません。
友達に堂々と言える仕事じゃないのが難点だけど……。
そういえば最近、周りの男子生徒によく見られている気がします。
私が彼氏に浮気されて別れてフリーになっていることは確かに知っている人は多いけど、そんなに広まるものかな?
前にサークルの先輩に最近綺麗になったって言われたし、ラウンジで明日香さんによりいい感じに見えるお化粧方法とか教えて貰ったりしているから、見てくれも前より垢抜けたからかも知れません。
まぁ、視線が気になるだけで声を掛けられた訳じゃないから、私が気にし過ぎっていうのもあるのかも。

サークルでも新入生が入ってきて、例年のようには新歓行事はできなかったものの和やかに顔合わせ的なことをして、楽しくやって行けそうです。
でもやっぱり、新学期になっても拓也はサークルに姿を現しませんでした。
私とのことどうこうより、それがサークルのみんなの知るところになっちゃったことが堪えたのかな?
男の人って、そういうプライドが高い部分は誰しもあるみたいだし……。
「あいつ、結局やめるのかねぇ」
「普通に4年にはなってたみたいだけど、こっちやめるならやめるって連絡して欲しいよな」
進入生徒の顔合わせの片隅で、去年拓也と同じ班で活動していた山田先輩たちが話しているのを小耳に挟みました。
一応学業の方は疎かにはしていないみたいです。
「そういやあいつ、結局ユキと付き合うことになったっぽいぜ」
「はぁ!?嘘だろおい……」
「なんか家に押しかけられたりとかして、なし崩しでって感じみたいでさ……」
ユキ。
拓也の浮気相手で、学内でもサセコと有名だった彼女と結局付き合うことになったらしいと、その時私の耳にも入ってきました。
そうなんだ。
私の感想はその程度で、特に深い感慨とか思うところもあまりなく。
ほんの少し前のことなのに、拓也と恋人同士だった頃のことがすごく遠い出来事のように感じていました。
浮気騒動を経てひとりになって、その後の出会いで私は沢山変わったんだろうな。
「あちゃー、聞いちゃった?」
私の様子を見たらしく、聡子さんが近寄って小声で話しかけてきました。
すごく気を遣っている感じが伝わってきたので、私は笑みを浮かべて言いました。
「大丈夫です、もう終わった話ですし」
「そうか、そうよね……でもまぁ、浮気者とサセコでくっ付くなんてお似合いなのかな。彼、サークルの人にも迷惑かけたまま顔出さなくなったし……」
お似合いか、確かにそうなのかもと私も思ってしまいました。
自分と相手を大事にしない人同士、好きにやっていってくれればいいという感じで。
それに、拓也はサークルの人たちにもそっぽを向かれてしまっているようでした。
一緒に活動をしていたグループで担当していた部分も投げ出して、特に同じ班の人たちには迷惑をかけていたようなので仕方ないのでしょう。
「彼、これからどうするつもりなんでしょうね」
誰と付き合うかは勝手ですが、サークルのことはきちんとけじめをつけて欲しいと思いながら呟くと、聡子さんは肩を竦めました。
「さあねぇ、このまま自然消滅って感じな気はするけど。最後に挨拶くらいしていって欲しいもんだわ」
サークルの中でも優しい方の人たちが匙を投げているのだから、もうしょうがないのかなと思ったのでした。

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