百合子の秘め事-「出会い系サイト」との出会い

2023-02-11

浮気騒動から半月程が経ちました。

別れ話の時に夏美が啖呵をきってくれたお陰か、あれから拓也がしつこく食い下がってくることもなく、この二週間私は彼と会うこともなく平穏な学生生活を送っていました。
彼と関係がある事柄と言えば、部屋の合鍵を返したことくらいでしょうか。
それも、封筒に入れてポスト経由だったので、直接会ったり話したりすることもありませんでした。
鍵に関してLINEで連絡する時、毎回謝ってくるのが面倒だった程度です。
覆水盆に返らず。
今更謝られても、もうやってしまったことをなかったことにすることはできないのです。

そうして学業とサークル活動、友達付き合いにバイト……私の日々は忙しくも充実したものでした。
ひとりになった時ふと、なんだか虚しいなと思うことはあったものの。
でも、すぐに新しい彼氏を見付けるなんて考えは浮かばなかったし、正直男の人と一対一で会うのも少し怖いような感じになってしまったんですよね。
誰もが陰で人を裏切るようなことをする訳ではないと、理解してはいたのですが……。

季節は冬の期末テストが始まる直前になっていました。
みんなテスト勉強に追われている中ですが、この期間はバイトもお休みにしていたので、いつもと違う時間帯に少しばかり時間が空きます。
その日は同じようなスケジュールでバイトが休みだった夏美と、近所のカフェでお茶をしていました。
「あの先生ヤバいよね~。テストでも変な問題出してくるし」
主にする話題は今の時期ならではのことや、講義や学友に関する事でしたが、私の様子を見て違う部分でも声をかけてくれます。
「あの件からニ週間くらい経ったじゃん。その辺どうしてるかなって気になってたんだけど」
「いつも通りだよ。拓也とも全然会ってないし、今は学校とバイトとかが楽しいし。彼氏とかは、しばらくもういいかなって」
「そっか……」
相槌を打って、夏美は何かを考えている様子でした。
「でも勿体ないよね。貴重な若い時間をこんなことで費やすなんてさぁ。百合子はこんなに可愛いのに」
「それ、なんかおじさん臭くない?」
夏美の物言いが、私の頭の中にある飲み屋でクダを巻いているおじさんに似ていて、ちょっと笑っちゃいました。
「だってそうじゃん。二十歳まであと何ヶ月だっけ?もう半年もないでしょ?」
確かに、もうすぐ私も十代とはお別れです。
大事な十代最後の大切な人との最後が、浮気されて別れたというのもなんとも言えない気持ちになってしまいます。
「はぁ……そうかもね。確かに勿体ないのかも」
と呟いて、私はひとりになった時にふと考えてしまうことを夏美に打ち明けました。
そこはかとなく虚しさを感じるようになってしまったり、男の人に対して複雑な感情を持ってしまったことを。
でも、辛い思いをした分を取り返そうという気持ちにもなれないし……。
男性誰もが拓也みたいに、隠れて浮気したり裏切ったりするものじゃないとは思っていることも。
それに、自分自身の夜の悩みも、ほんの少しだけ話しちゃいました。
エッチな話なんて普段しないから、少し緊張しました。

ぽつぽつと話す私を見据えて、夏美は小さく頷きながら聞いていてくれました。
そして、思い切ったように切り出します。
「百合子さぁ、もしよかったらだけど、これやってみない?」
とスマホを操作して、画面を見せてきました。
「これ?えっと『ラブメール』?アプリかな」
「そう、『ラブメ』ね。これ『出会い系』なんだけどさ……」
声を潜めた夏美の口から出てきたのは、出会い系サイトの名前でした。
当時の私には全く馴染みがなく、いい印象どころかニュースで事件が起きた時に取り沙汰されているような、あまりよくないイメージの方が大きかったです。
「実はさ……言ってなかったけど、順平と出会ったのこれなんだよね」
順平というのは、夏美の彼氏。
同い年だけど居酒屋で働いている、気のいいお兄さんという感じの好青年です。
夏美がやっていたのは置いておいて、すごく普通で悪い印象のない順平さんも、出会い系なんてやってるんだ……と、ちょっと意外でした。

 

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