百合子の秘め事-拓也との別れ・話し合い

2023-02-11

ユキが私に直接会いに来た事、拓也の浮気が本当だった事は、翌日に友人たちやサークルのメンバー全員が知るところになりました。
私は気付いていなかったのですが、図書館で見ていた生徒たちの中にサークルの人がいたそうなんです。
それは拓也と友人付き合いもあった山田先輩で、男性陣の中では「男だからこういうこともある」みたいに拓也を庇う人も出たのですが、彼は真剣に怒って、みんなに知らせていたみたいです。
「好きな人を大事にしていて感心していたのに、陰で裏切っているなんて失望した」
そんな感じのことを、面と向かって拓也に言っていた覚えがあります。

私はみんなに知られたことで、沢山心配や励ましのLINEを貰ったり、直接声を掛けて貰ったりしてすごく支えられていました。
同時に、浮気の話がみんなの知るところになってしまったのは、恥ずかしくて惨めに思う部分も大きかったです。
どうして浮気されちゃったんだろう、私が悪かったのかな……、信じていたのに……と、様々な思いがぐるぐると頭の中を巡っていました。

浮気がバレた当の拓也はというと……
彼の口からちゃんと話を聞こうと連絡するも、LINEは既読無視されるし電話も繋がりません。
大学の中でも姿を見掛けないし。
どうやら私に発覚してしまったことで、パニックになって逃げ回っているみたいでした。
こんな人だったなんて……。
山田先輩の働きかけもあって、浮気の件に怒ってくれたサークルメンバーによって拓也の身柄はすぐに確保されました。
男性陣の前で縮こまっている拓也は、まるで首根っこを掴まれた猫のようでした。
彼のこんな姿、見たくなかった。
「百合子、大丈夫?」
「誰か一緒にいた方がいいんじゃない?」
私に付き添ってくれていた夏美や聡子さんが、とても心配そうに聞いてきます。
「とりあえず、一対一で話してみます」
何かあった時にすぐに連絡できるようにとスマホを握り締めて、私は拓也の顔を見ました。
「それじゃ、行こう」
拓也は黙って頷き、私に付いてきます。
向かった先は、学校近くのカフェのひとつ。
ナチュラルな雰囲気が好きで拓也ともよく来ていたのに、こんな話のために使うことになるなんて……。

「私はブレンドにするけど、何にする?」
「同じので……」
カフェのボックス席に座った後も、拓也の表情は精彩を欠いていて借りてきた猫のように大人しく「これが本当に私の知っている拓也なんだろうか?」と思ってしまいました。
店員さんに注文したコーヒーが届いた後、重い口を開きます。
「ユキって人があなたと別れてくれって言いに来た話は、もう知ってるよね」
彼の顔色がサッと青くなりました。
「俺は別れたくない!」
話し合いの第一声がそれなんて、少し呆れてしまいました。
「他にまず言うことがあるんじゃないの?」
そう言うと、拓也はがっくりと肩を落とします。
私は続けて言います。
「あの人、拓也も私と別れたいって言ってたけど」
「それは……」
口籠る拓也。
多分、言ったのは間違いじゃないんでしょうね。
彼女とベッドに入ったり、いい感じになっている時にノリで言っちゃったのかも知れません。
「だけど、こんなつもりじゃなかったんだ。彼女と付き合うつもりだって……」
「でも、シちゃったんでしょ?」
と聞くと、彼はまた黙り込んでしまいました。
拓也とユキの間に何があったのかは分かりません。
でも実際浮気をして、身体の関係まで持ってしまったのは確かです。
「気の迷いだったんだよ……彼女は百合子と全然違う子で……」
俯いたまま、ぼそぼそと拓也が言い始めました。
「百合子は寝てる時、よさそうじゃないっていうかあんまり楽しい感じじゃなかったから」
それって、私とのエッチが楽しくなかったっていうことなのでしょうか。
ただ付き合っていたから義務感みたいなのでやっていたと?
でも、私はすごく気持ちいいとまでは感じなかったのに、あなたはイってたよね。
混乱しながら、私は茫然と聞いていました。
「ユキはすごく積極的だったし、気持ちよさそうだった。口でしてくれたりしたし」
「何言ってるか、分かってるの」
私がそういうことをしようとした時は「百合子はそんなことしなくていいから」と止めていたのに、どの口が言うのでしょう。
言ってくれれば、私だって頑張ったのに。
男の人って、相手の女の子には清純でいて欲しい癖に、建前とは裏腹にエッチなことして欲しいとでも思っているものなんでしょうか?
それとも言い訳のため?
調子が良すぎます。
元々ショックだったり悲しかったりという気持ちが大きかったのですが、ここで心底拓也の存在が嫌だと感じるようになってしまいました。

「もう、終わりにしようよ」
次に私の口から出たのは、その言葉でした。

 

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