百合子の秘め事-浮気相手が乗り込んで来た!

2023-02-11

大学構内や他の場所で、私以外の女の子と一緒にいる拓也の姿を何人かの人たちが見掛けたこと。
そして、知らない人が見れば恋人同士だと思ってしまう程、仲がよさそうだったこと。
友人間でちらほらとそんな噂が出始めていたところ、昨日ついに聡子さん自身もそんな拓也の姿を見てしまったのだということ。

聡子さんの告白のショックが大きすぎて、私はその後ぼーっとしていました。
「大丈夫?顔真っ白だよ」
席に戻ってきた私を夏美が心配してくれますが、ろくな返事もできません。
そんな私を、別の席に案内された聡子さんたちも心配そうに窺っていました。
少し時間が経って、コーヒーも冷めきってしまった後に、やっとなともなことを喋れました。
「……拓也が浮気してるかも知れない」
「えっ?拓也さんが?」
夏美が驚くのも無理はありません。
彼女も拓也の真面目そうな姿や、私と接している優しい態度しか知らなかったのですから。
聡子さんから聞いた話を伝えると、夏美も動揺しながら考え込みます。
「どうしたらいいんだろ……直接本人に聞いても、もし本当だとしたら正直に答えてくれないよね」
確かに、夏美の言う通りだと思いました。
本当に拓也が、私に内緒で他の女の子とも付き合っているのなら……あの拓也が、信じたくないけど……聞いたとしても、認めてはくれないでしょう。
それに、聞く勇気だってない。
私は途方に暮れてしまいました。
今は何も考えられません。
「少し、様子を見てみようと思う」
そう言うと、夏美もそうだねと頷きました。
「今は動揺してるだろうし、慌てて行動しても上手くいかないかもだよね。もう少し冷静になってからにしよう。私も色々考えたりとか、できることしてくから。ね?」
私はその言葉を聞いて、少しほっとした気持ちになりました。
彼女はいつも親身になってくれるから、本当に有り難い。
東京でもいい友達ができてよかったなって、改めて思ったものです。

数日後、私は講義の復習やレポート作成のために構内の図書館にいました。
「そういえばあの件、どうなった?」
一緒に調べ物をしていた夏美が聞いてきます。
あの件とは勿論、拓也の浮気話のこと。
「まだ何も……本当かどうか、確認もできてないしね」
「そっか……」
夏美の表情も曇ってしまいました。
でもすぐに、彼女は明るい声を上げます。
「とりあえず今はこっち片付けちゃお!明日もどうせ面倒なの出されると思うし」
明日のコマに入っている先生は、レポートやらなにやら、毎回色々と課題を出してくるので私も夏美もちょっと苦手でした。
私はそうだねと答えて、今やっているレポートの資料を集めていきました。

そんな、図書館の穏やかな時間が続くかと思われた時でした。
「あのー」
本を取りに席を立った私に、ひとりの女生徒が声を掛けてきました。
明るい茶髪にキラキラのネイル、学校ではちょっと派手めの服装。
私とは全然雰囲気の違う女の子。
学部が違うのか、見たことのない子でした。
「あなたが百合子ちゃん?拓也の彼女って地味なんだね」
いきなり失礼なことを言ってきたので、私はただただびっくりして彼女の顔を見返すしかありませんでした。

そう、彼女こそが拓也の浮気相手、ユキだったのです。

 

★ランキングに参加しています。よかったらクリックしてくださいね★
にほんブログ村 大人の生活ブログ 恋愛小説(愛欲)へ
にほんブログ村